【導入事例】100MW産業用マイクログリッド

【導入事例】
100MW産業用マイクログリッド

負荷/品質要件/アプリケーションによって独自の特性を持つ産業用マイクログリッド

概要

 ここでは、産業用の製造業に信頼性の高い電力を供給するためのマイクログリッドの開発と導入例を紹介します。
 本稿では、産業用ユーザーが直面する一般的な課題のいくつかと、サステナブルで長期的な独立発電戦略を実行しようとする際に利用可能なソリューションを示しています。
 Langley Holdingsのパワーソリューション部門の「The Power of 10」の技術を使用し、30MWの導入から開始し、10MW単位で拡張していく100MWのマイクログリッド構築の説明したもので、これは半導体などのハイテク部品の電力集約的で電力品質に敏感な製造業務向けに供給されているものです。
 このような製造プロセスは、高調波、電圧ディップ、周波数変動などの擾乱に対して非常に敏感であり、重要な負荷に対する信頼性の高い電力供給を確保するためには、このような擾乱を回避しなければいけません。

 この検討例では、エンジン、エネルギー貯蔵、電力調整、安定化、マイクログリッド運用の接続性をカバーしており、必要に応じてメイングリッドとの接続や切り離しが可能です。
 この検討では、製造プロセス装置の一次電源として機能するオンサイトマイクログリッドが求められています。熱電併給(CHP)システムは、電気、蒸気、温水を供給します。商用電源グリッドはバックアップとして機能します。稼働開始日には自然エネルギーは使用されていませんが、マイクログリッドの電力システムと調和するように、将来的にRER(再生可能エネルギー資源)を追加することができます。
 Langley Holdingsのパワーソリューション部門の「The Power of 10」、Bergen Engines、Marelli Motori、Pillerを組み合わせたアプローチにより、電圧と周波数を所定の範囲内に継続的に維持することができます。これは、商用電源供給システムから切り離されたアイランドモードで運転する場合も、連結して商用電源グリッドをバックアップ電力として使用する場合も同様です。
 このシステムは、商用電源グリッドとのカップリングおよびデカップリング時に、電圧や周波数が低下することなく電力品質を維持するように設計されています。
 クリーンで信頼性の高いPOWERBRIDGEによるフライホイール式運動エネルギー貯蔵を使用するピラー10MW統合電力調整安定化(IPCS)システムによって提供される継続的で安全なバックアップは、アイランドモードと商用グリッド統合モード間の計画的および計画外の切り替えに必要な補償時間を提供します。
 グリッド接続機能により、双方向の電力フローが可能になり、商用電源グリッドから電力を取り込むだけでなく、現場での需要が少ない時には、商用電源グリッドに電力を供給することもできます。
 敷地内のマイクログリッドシステムは、電気と熱(熱交換器を通して冷却)を空調と環境管理、および施設の蒸気生産用に供給します。
 エンジンは、ナノメートルスケールの製造工程に支障がないように、強固な基礎と、エンジンと製造現場の地盤との間の振動に対する二重の断熱材を使用し、厳しい騒音・振動要件を満たしています。
 この検討では、商用電源グリッドに依存しない発電が、ヨーロッパ全土および世界各地のすべての大規模産業ユーザーにとって政策課題であるという背景のもとに提供されています。

ソリューションの構成要素

 初期の30MWの一次電力需要に対して、水素と天然ガスを混合して運転する3台のBergen Bシリーズ、10MWレシプロエンジンが配備されています。Bergen Enginesは、低炭素・無炭素運転を達成するために、水素と天然ガスの混合比率を高めるサステナブルなロードマップを持っています。
 これらの750rpmのエンジンには、特別に設計されたMarelli Motoriの10MWオルタネーターが装備されています。
 Marelli Motoriは、発電機が長年にわたって連続全負荷運転に耐えられるよう、Bergen Enginesとの統合用に10MWオルタネーターを最適化しました。
 設計は、発電用オルタネーターに要求される応力および疲労強度パラメータに準拠しています。また、エンジンからの高調波と組み合わされる可能性のある波形の問題も回避しています。
 

 オルタネーターは、マイクログリッド内の正確な電圧調整を管理し、必要に応じてIPCSユニットによってサポートされています。
 自家発電電力の品質は、バックアップのGQ(Grid Quality)電力に対してHQ(High Quality)に分類されます。
 このマイクログリッドは、Pillerの最新UB-Vシリーズ10MW IPCSユニットを連続的な電力調整と緊急供給に使用しています。IPCSは、PillerのPOWERBRIDGE 運動エネルギー貯蔵(フライホイール式)の電力補償と組み合わされています。
 POWERBRIDGE 21モジュール(フライホイール式)は、10MWの電力補償を10秒以上提供します。
 PillerのIPCS技術は、必要な安定化を提供します。IPCSは、高品質のマイクログリッドを商用電力の障害や停電から保護すると同時に、接続されている間は双方向の電力交換を可能にします。商用電力から切り離されたアイランド運転では、負荷の変化や電力供給が乱れる可能性がある場合に、厳しい周波数許容度を保証します。

アイランドモードの産業用マイクログリッド

 Bergen Engines, Marelli Motoriのオルタネーター、PillerのIPCSを統合的に使用することは、アイランドモードのマイクログリッド産業用アプリケーションの一次電源に最適です。

 このシステムは高品質のローカル供給ネットワークを形成し、重要な負荷に一定の電圧と周波数で中断のない電力を供給します。
 システムは非常に効率的であり、このソリューションが現場の全エネルギー要件を満たすことができます。
 熱電併給CHPによって電力と熱を利用し、同時に発電と排熱利用を行うことで、ガスエンジンシステムの効率は、排熱利用を行わない場合の35%に比べ、85%に達します。
 またこのようなシステムは、供給電圧の品質に対する高い要求を満たすために、電圧と周波数を所定の範囲内に継続的に維持することを保証します。

 ■ 電圧 20kV    公差 ± 8 %
 ■ 周波数 50 Hz  公差 ± 1 %

 マイクログリッドが商用電源グリッドの供給から切り離されたアイランドモード運転時、または統合され、バックアップ電源として商用電源グリッドを使用している時、上記は維持されます。
 最初に配備された3台の10MWモジュールで耐障害性を達成するために、3台目のユニットがN=2+1台の冗長ユニットとして機能します。これによって、非常用の高速ディーゼル発電機や、UPSに電力を供給するための大規模なバッテリーの必要性がなくなります。
 システムが100MWまで成長すると、メンテナンス時に予備電力を供給するユニットが常に利用可能な体制になり、そうするとN+1冗長運転が継続的に確保されます。
 100MWのフル稼働時には、2台のピラーUBV IPCS 10MWユニットがシステムの安定性を提供します。
 IPCSは、Bergen Engineの発電モジュールに結合された周波数安定化および電圧サポートモジュールです。10MWのサイズは、4 x Piller 2.5MWのUB-Vシリーズのモジュールを1つのユニットに組み合わせたもので、それぞれに2 x POWERBRIDGE PB21(フライホイール式)が装備されています。
 これらはマイクログリッド内のエンジンに直接電気的に結合され、10MWのデカップリングチョークを介して保護グリッド接続を形成しています。調整された電力は、IPCSモジュールごとに最大10MWまで必要に応じて分配されます。
 IPCSの構成は、CHPマイクログリッドの安定した運転を保証します。あらゆる種類の負荷変動に対して、ガスエンジンの反応時間による重大な周波数変動は現れません。

マイクログリッドカップリングとデカップリング

 Bergen Engines、Marelli Motoriのオルタネーター、PillerのUPS、エネルギー貯蔵、IPCS安定化技術を総合的に使用することで、マイクログリッドの産業用途のケースにおいて、従来の商用電源グリッドとのカップリングやデカップリングに最適なものとなります。
 このシステムは、双方向の電力フロー用に設計されています。電力調整装置は、システム(grid quality bus, GQ))と並列運転CHPステーション(High Quality Bus, HQ)の間のリンクを確立します。このシステムは、ACライン供給とCHPステーション間の双方向エネルギー伝送用に設計されています。
 このシステムは、連続的な負荷供給、一次ベースロード電力、系統の瞬低時の補償のための系統とのカップリングとデカップリング、および系統の制約によりピークカットや負荷遮断が必要な場合にも同様に機能します。
 IPCSシステムは、マイクログリッドと商用電源グリッド間の相互作用を可能にします。この構成では、マイクログリッドに設置されたシステムの電力によって、商用電源グリッドをサポートすることができます。20MWのPillerシステムを設置した場合、20MWのクリーンな調整電力を商用電源との間でインポートまたはエクスポートすることが可能です。
 商用電源との連系運転中は、GridGateシステムがマイクログリッドを商用電源の停電から保護します。Pillerのチョークは、Bergen enginesが安定した電圧を供給することで、周波数の一貫性という点で電力品質を損なうことなく、アイランドモードへのスムーズな切り替えを保証します。

 電力がインポートまたはエクスポートされる場合、商用電源が停止した場合にグリッドから突然切り離されると、マイクログリッドの電力バランスが崩れますが、Bergen enginesの電力バランスが整うまで、IPCSのフライホイール式運動エネルギー貯蔵装置によって補償されます。
 また、IPCSのPOWERBRIDGE PB21(フライホイール式)の運動エネルギー貯蔵装置は、Bergen enginesの電力バランスを維持しながら、商用電源に再接続するための適切な再同期を保証します。

100MWの産業用スケール

 大規模な独立型製造工場や工場団地に100MW以上の電力を供給する産業用マイクログリッドは、ますます一般的になりつつあります。
 マイクログリッドを通じて従来の発電事業者や送電系統運用者との関係を再構築している企業は、独立性と安全性を求めて「The Power of 10」に注目しています。

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